2018年12月26日水曜日

年の瀬の歌 2018

「ちょっとだけ」友は私に後悔と思い出残し黄泉に向かった

      ★「月蝕歌劇団」主宰 高取英逝去

寺山の劇魂(こころ)を身体に沁み込ませ過激に疾走(はし)り劇魔昇天

博識の劇王描く幻惑の史劇いつしか詩劇になりき

知行するときの心得花房に 死してその名の意味を我知る (註)高取とは知行の多い人、英とは花房。

月蝕にこだわり愛した怪人は月欠けの日に「エイッ」とあの世へ

マッチ擦り顔を照らして己(おの)語る月蝕の芸 誰(た)が跡守る

      ★月蝕歌劇団公演「ドグラマグラ」観劇歌

久作の胎児の夢が明治期の土蔵真暗(どぐらまぐら)の中で蘇生す

胎内で雌雄未分の呉一郎 凛とし少年演じる少女

難解な夢のマグマを何回も溶いてほぐして高取歌劇(エンタメしばい)

      ★流山児★事務所公演「腰巻お仙」観劇歌

万遍(まんべ)なく生(せい)ある男(おのこ)受け入れる腰巻お仙の下半は仏

末法を生きる時代にお仙来て腰巻ハラリ股間はキラリ

笛吹けば煩悩深き人数多(あまた) お仙求めて河原に集う

      ★観能歌

足擦れる音が舞台を引き締めて奥深き能 五感ピリピリ

2018年11月29日木曜日

悟り雪

僻事(ひがごと)を知って我が意を陳べるより音信(いんしん)断って矜持を保つ

『ミミのこと』ろう唖の性女をコミさん(注1)は音なき故の聖女に描(か)いた (注1)田中小実昌=直木賞作家

指で鼻つまみ力(りき)めば空気が通り聴力アップし耳 人並みに

★      ★

芸濃という名の町に芸の濃い劇団作り町史繙く

町民の力集(たか)りて芝居して町史解明(あか)して拍手喝采

鼈甲のグラサン掛けて見得切れど座頭の亀の視界真っ暗

三茶から石巻経て上野へと地を這った亀 藝は横這い

若き日に都市(まち)で焦がれし恨み雪 老いて里にて見る山白し

帰郷して背筋伸ばせば西方の山に積もりし悟り雪見ゆ

★      ★

扉にも柱にもある寺山の言の葉躍り人の輪 無限

2018年10月28日日曜日

日和山見て

人に棲む鬼は隠(おに)なり侮るな!慢心あれば寝目(いめ)に現わる

★     ★

「家を出ろ」寺山修司の呼びかけに1968(イチキュウロクハチ)我東京へ

故郷を出でて穢土の地生き抜いて今帰郷して夕陽眺める

若き日に穢土の極楽旅をして老いてこぼれて「南無阿弥陀仏」

50年前のカレーは「松山容子」2018(ニイマルイチハチ)レトロを食す

★      ★

背に甲羅ほっかぶりして亀になり地べた這いつつ世界を覗く

「吾輩はカメである」って粋(イキ)がって生きた青春 今は白秋

被爆した亀を演じて石巻 日和山(ひよりやま)見て往生を遂ぐ

★      ★

暴風雨日本列島縦断し 土台こなごな安倍一強の

台風で潮目変わって辺野古には「もう新しい基地は出来ない」

2018年9月30日日曜日

見逃すな

十七の言の葉に乗せ句を吟ず井上井月(せいげつ)千両詩人

井月は幕末明治の三十年(みととせ)を伊那谷の地に身を寄せ生きた

日々の苦が人と交わり句となりて里になじんで心あたたか

★     ★

曼殊沙華群れて花咲く里が故郷(さと) 異郷の都市(まち)で見るは一輪

一面に咲いて乱れて彼岸花ぽつねんと咲く花の哀れや

ぼたもちとおはぎを食べてあとは何 あんころ餅は皿まで食す

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首の、(てん)食われちぎられ犬神は大神(おおかみ)となり 月に吠えてる

寺山の言葉吐くとき女優らも昭和精吾の如く凛とし

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あの頃は「あべのスキャンダル」旬だった いま見逃すな安倍のスキャンダル

2018年8月30日木曜日

旅立ちの歌

縁起良し女三代揃い踏み 芸濃い劇団前途洋々

伊勢の地に生きて劇して町興し少女と媼(おうな) 思いひとつに

★       ★

「ジョー」でなく「力石徹」と声上げた 背中(せな)に昨日(きのう)のふるさと人は

霊場の写真が繋ぐ人の輪の話題いつしか寺山修司

一筋の赤い涙を流して消えた大山デブコは娼婦であった

いいカラダ持てば男が寄ってきて寄ってたかって「生老病死」

「パンパン」と欲望のままパン食って太り太って色魔昇天

★       ★

列島を暗雲覆うオウムの死刑 何故?障碍者ジェノサイドの日に

雲となり雨となりして底を生き古希が間近かになりて安心(あんじん)

雲のない夜空に光る星ひとつ「孤高に生きる」の意味が染み入る

2018年7月29日日曜日

猿轡にて

客席と舞台さかしま野外劇 奈落なき故地獄剥き出し

母断てど顔無き男が糸引いて搦め手決めて娼婦の地獄

「糸地獄」「伊藤地獄」と言の葉連鎖 実は娼女の「一統地獄」

★       ★

風体(ふうてい)を知らぬ男の口舌は恥ずかしきかな身の程知らず

嘘重ねボスの座保つ猿の口 虚しさ断とう猿轡にて

仕組まれし集団処刑何のため誰(だ)がためならずそれ君のため

人殺すこと許されし君の鈍感 死刑執行前夜の宴

人殺す人の苦しみわからぬ君に人殺す資格あると思えず

★       ★

入り乱れ絡みからまる人模様 気が付けば我「南無阿弥陀仏」

此処でない何処か目指して飛び出して老いて此処へと戻りし凡夫

2018年6月30日土曜日

命革めよ

槍持たぬ少女が少年演じて誘う暗黒(アングラ)歌劇 月蝕の刻(とき)

今様の七五のリズム四十(しじゅう)と八字親鸞和讃心しみいる

盛り場の一隅照らす人ならん堕ちて身体を張って歌詠み

光差す墓前で老婆合掌す無碍光如来の迎え信じて

人の世の「苦」は「死」をもって道となす「苦楽」が「暮らし」と成るが如くに

この世からこぼれて行(ゆ)かば浄土あり南海の涯 補陀落(ふだらく)の山

南方の浄土を目指し渡海した熊野の山の浜の宮より

古の上人浄土の夢を追い補陀落山寺(さんじ)を発って海路へ

★        ★

背に墓を背負いて命(めい)を革(あらため)よ「ふるさと人のお化け」の使命

年の瀬の歌 2018

「ちょっとだけ」友は私に後悔と思い出残し黄泉に向かった       ★「月蝕歌劇団」主宰 高取英逝去 寺山の劇魂(こころ)を身体に沁み込ませ過激に疾走(はし)り劇魔昇天 博識の劇王描く幻惑の史劇いつしか詩劇になりき 知行するときの心得花房に 死してその名の...